水嫌いだった愛犬との思い出

私が小学校4年生の時に柴犬のポチが家族になりました。
妹が犬が大好きでどうしても飼いたいと親に頼んでポチが家にきました。
私は犬も生き物もそんなに好きではなかったので、あまり飼う気になっていませんでしたが、小さな子犬で来たポチはとてもかわいかったです。
犬はよく人間のことを見ています。
ポチのお世話をあまりしなかった私にはポチも懐きませんでした。
それでも本物の兄弟のように私たちと一緒に遊んでいたポチは、自分のことを人間だと思っているようでした。

家族でお出かけをするときは「自分も連れて行け!」とアピールしていました。
そして帰るのが遅くなるととてもうれしそうに私たちを歓迎してくれました。
私は年の離れた弟の世話をしているようなつもりでいました。
普段のお出かけはお留守番でしたが、川へ遊びに行くときはポチも一緒でした。
車で父が小さい時に遊んでいたという山奥の川へ連れて行ってもらうのですが、ポチは当たり前のようにシートに座りました。

みんなでお出かけするのは初めてだったので、ポチはとてもうれしそうで終始尻尾を振っていました。
車を停めてから川へ行くまでの道のりも先頭を歩いていました。
川へ着くと、水だということに気が付いて、川には近寄りませんでした。
父と母は足を水につけていましたし、妹は水着になって泳いでいました。
私は水が苦手だったので、川の近くでポチの綱を持ちながら石を積んで遊んでいました。
ポチはできる限り離れたところで私たちの様子を見ていました。

そして、大好きな妹が川から上がってくるととてもうれしそうにしていました。
突然妹がポチを抱きかかえて川の真ん中まで歩いていき、そのままポチを落としました。
ポチも私たちもびっくりしました。
泳げないと思っていたポチはへたくそな水かきで岸までたどり着くと、私のそばに寄ってきました。
それからは妹や父、母がポチを呼んでも一切私の傍から離れませんでした。
普段は私が呼んでも来ないポチが私の傍から離れないのは、それほど怖かったのだと思います。
それから川へ何度も行きましたが、私の傍を離れることはありませんでした。
犬にもトラウマがあるようです。
川へ行ったときは私とポチが唯一仲良くなれる時間でした。